東京エキストラ日記

　現場は狭くて人通りの多い商店街とあって、撮影が始まるまでは一般の通行人もどんどん現場を通り抜けて歩ける状態だったのですが、そういう中、エキストラの皆さんは(あたりまえですが)スタッフに指示されたスタート位置でじっと待機しています。それは客観的には「商店街の真ん中の、あまり立ち止まるのにふさわしくない位置に突っ立っている人々」にほかならないんですね。
　顔つきや姿勢からも緊張が伝わってくるし、要するに「挙動不審」……むろん映像になってしまえば不自然ではないと思いますが、エキストラって「現実世界の中では想像以上に不自然な存在」なんだなあ、なんてことをあらためて感じた次第です。

　それで思い出したんですが……何週間か前、ぼく自身も都心の繁華街で通行人のエキストラをやったのですが、このとき、ちょっと印象的なできごとが２つありました。

その１：スタッフに指示された位置で待機していたら、別のスタッフから「ロケ中なので、ここにお立たちにならないでください」と言われてしまった。
その２：別のカットの撮影待機中、通りがかりの観光客らしい外国人の人に「このへんに銀行はありませんか？」とたずねられた。

　それだけ「自分はホンモノの通行人っぽく、周囲の情景にとけこめていた」と受け止めるなら悪いことじゃないかもしれないんだけど、しかしどうも少しリラックスしすぎて、待機中、「私はエキストラ」というシグナルがうまく出せてないところがあったのかな、なんてちょっと反省してます。
　すなわち、こうした混乱しやすいシチュエーションでの「望ましいエキストラ像」は、次の２つの「らしさ」の両立、という点にあるのではないかと。

・「私は本番を待ってるエキストラ」ということがひと目でわかるよう、待機中は緊張感をもってふるまう。
・本番中はできるだけ「ホンモノの通りがかりの人」に見えるよう、自然にふるまう。

　その意味では「谷中ぎんざ」で見かけた人たちのほうが「役者が一枚上」、まだまだぼくなんぞ修行が足りない……てなところでありましょうか。

(なお、写真はロケの邪魔にならない位置まで遠ざかったあとで撮った「谷中ぎんざ」のスナップです。よく見るとロケ隊らしい人影が若干写っちゃってたのでした)

＜付記＞
　いやはや、時代だなあ。この撮影に参加してたらしい人の日記を見つけちゃいました(^^;。CMの撮影だったみたいですね。
http://blog.goo.ne.jp/cheezee/e/31e27e1d721e41357fb0f116cac846b9