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開き直りジャケット!?

more_than_ever●MORE THAN EVER - Blood, Sweat & Tears

「スピニング・ホイール」などで今なお高い知名度を保つブラスロックグループ/ジャズロックグループ、Blood, Sweat & Tears(B,S&T)が、デビュー後かれこれ8年、重要メンバーの離脱や再加入など、さんざん紆余曲折を経た後に出したアルバムがこれ(1976/7)。

 中身は当時のフュージョン界の寵児として飛ぶ鳥落とす勢いだったボブ・ジェームスをプロデューサーに迎え、著名なスタジオミュージシャンが大挙参加した、なんだか製作費が相当かかっていそうな異色作だが、ジャケットのデザインはご覧の通り、中身のLPレコードのレーベル部分をそのまま拡大したようなシンプルなもの。

 意表をついて新鮮ともいえる半面、いまいちチープというか「投げやり」「手抜き」感が漂ってくるというか、「何かウラにあるんでは」と思わせるようなところを当時感じたりした。
 なにより不安?だったのが、「日本語盤=レーベルのデザインが異なるCBSソニー盤のジャケットはどうなるのだろう。このデザインのまま出すつもりだろうか」という点だったが、結局このアルバム、日本盤が出ないまま現在に至っている(B,S&Tのアルバムとしては唯一のケース)。

 タイミングとしては来日公演があってじきのころで、その来日公演の直前には「日本とオランダだけで発売」という2枚組ライブアルバムまで出たばかりだというのに、手のひら返したようにこのアルバムはなぜか日本では日の目を見なかったのである。
 しかもB,S&Tが古巣・CBSから出したアルバムはこれが最後で、その次の「Brand New Day」というアルバムはABCレーベルから翌年にきちんと出ている。

 ……というわけで、どうも「これを最後にCBSとの契約が切れることに」みたいな事情から、皮肉をこめてCBSのレーベルデザインをそのままジャケットに使った……みたいな背景のいきさつを想像してしまったりするのだけれど、むろん想像にすぎないので真相は不明だ。

more_than_ever_b ちなみに、中身(音楽)のほうはというと、全曲のアレンジを提供したらしいボブ・ジェームスの資質が色濃く反映した、「いわゆるフュージョン・サウンド」が基調。どういうジャンルのどういうグループのアルバム、といった先入観なしに(かつ、イージー・リスニング的に)聴くぶんにはなかなか秀作というか、少なくともぼくにとってはキライな種類の音楽ではない。

 難を言うならゲストミュージシャンが多すぎ、ボブ・ジェームスがちょっかい出しすぎで、グループとしてのB,S&Tの独自色は当然かなり希薄だが、全般にゆったりしたテンポの心地よいサウンドにかぶさる看板ボーカリスト・D.C.トーマスの円熟味あふれる歌いっぷりは見事だし、唯一のインストルメンタル曲「HEAVY BLUE」での、当時まだ新人だったマイク・スターン(のちに人気フュージョン・ギタリストとなった)のギターも印象的。

 B.S&T末期の、「傑作にはなりそこねたけれど聴いてソンなことはない注目作」というところだろうか。

 なお、本作は2003年に初めてCD化された。

<曲目>
 (太字は個人的な好み)
1-1. THEY (D.C.Thomas - W.D.Smith)
1-2. I LOVE YOU MORE THAN EVER (A.Landon - D.Lenier)
 (デビューアルバムによく似たタイトルの曲がありますが、まったく別の曲です)
1-3. KATY BELL (S.C.Foster/arr.and adapted by Bob James)
1-4. SWEET SADIE THE SAVIOR (P.Austin)
2-1. HOLLYWOOD (D.C.Thomas - W.D.Smith)
2-2. YOU'RE THE ONE (D.C.Thomas - W.D.Smith)
2-3. HEAVY BLUE (L.Willis)
2-4. SAVED BY THE GRACE OF YOUR LOVE (W.D.Smith - D.Palmer)

<参加ミュージシャン>
 (太字はこの時点のB,S&T正式メンバー)
Lead Vocal: David Clayton-Thomas
Drams: Bobby Colomby
Percussion: Don Alias
Bass: Gary King
Keyboards: Bob James, Richard Tee, Larry Willis
Guiters: Steve Khan, Hugh McCracken, Eric Gale, Mike Stern, Eric Weissberg
Trumpets: Tony Klatka, Forrest Buchtell, Jon Faddis, Marvin Stamm
Trombones: Dave Taylor
Trombone & Tuba: Dave Bargeron
Tenor Saxophone & Flute: Bill Tillman
Alto Saxophone: Arnie Lawrence
Xylophone, Marimba, Vibes: Dave Friedman
Oboe: Sid Weinberg
Singers: Pati Austin etc.

※他にベーシスト Danny Trifanがこの時点のB,S&T正式メンバーとしてクレジットされているが、このアルバム自体には参加していない(未加入だったらしい)。

03:57 PM in 音楽BLOOD,SWEAT&TEARSブラスロックジャズロックフュージョンDAVID CLAYTON-THOMASBOBBY COLOMBYBILL TILLMANMIKE STERNTONY KLATKADON ALIASLALLY WILLISFORREST BUCHTELLDAVE BARGERON |